労働訴訟

 

会社が,従業員から訴えられることがあります。

 

給与や残業代の未払い,不当解雇などを主張して紛争になるというケースが多いのですが,最近は,パワハラやセクハラ,マタハラ(マタニティハラスメント)といった新しいトラブルも増えてきており,会社としては,従業員とのトラブルを事前に防ぐという労務管理の重要性が高まってきています。

 

労働訴訟を起こされたら

残業代の支払いなどを求めて労働訴訟が起こされたら,会社としてはこれに対応して,必要な反論を準備しなければなりません。

 

まず,相手の求めている内容を,訴状の「請求の趣旨」という欄から読み取ります。ここに,金銭支払いを求めているのか,それとも「従業員としての地位確認」を求めているのかが記載してあり,どんな結論を求めて提訴しているのかが分かります。

 

紛争の実態を把握すること

訴訟が提起される前に,従業員と会社との間で交渉が行われていることもあります。

 

人員削減のために退職勧奨をしたことがあるとか,処遇やハラスメントなどの職場環境について本人から相談を受けていた上司がいる等,事前に協議をしたことがあれば,おおよその本人の不満や主張がなんなのか,予測がつきます。

 

そのうえで,訴状の「請求の原因」という欄を読みます。ここには,「請求の趣旨」を基礎づける事実関係が記載してありますから,この内容で,なぜ提訴に踏み切ったのかの理由が読みとれます。

 

対応を考え,反論を準備すること

訴状を読むだけで放っておいては意味がありません。一方的に起こされた訴訟ではありますが,会社としての主張や反論をきっちりと構成し,これ裏付ける証拠を準備することが必要です。

 

たとえば不当解雇が争われている内容であれば,従業員からは,理不尽な理由で解雇された,という主張がされているでしょう。会社としては,たとえば「人員削減の必要があったからやむなく解雇したのだ」とか,「そもそも一方的な解雇ではなく,本人と話し合った末に合意の上で退職したはずだ」など,反論があると思います。

 

証拠の準備を行う事

会社としての主張は,主張だけでは意味がなく,裏付けとなる証拠の準備が必要になります。

 

たとえば不当解雇の主張に対して「これは合意退職だったのだ」と反論するのであれば,本人に書かせた「退職合意書」を提出するなど,本人が自主的に退職したという裏付けを提出します。

 

和解という解決方法

訴訟になっても,判決によって白黒はっきりさせる,というだけが解決方法ではありません。

 

訴訟の途中の段階で,当事者双方が歩み寄って,どこかで落としどころを見つけて話し合いで解決するという,「和解」という方法があります。

 

実は訴訟案件の多くは「和解」で解決することが多く,たとえば不当解雇を主張している裁判でも,当初は職場への復帰を求めていましたが,給与数か月分の退職金を払い,これで退職したことを確認する,というような金銭解決を図るという事が多くあります。

 

もちろん,これは相手との条件交渉によりますし,会社としても一定の負担が生じる内容ではありますが,紛争の早期解決が望めるため,「時間を金で買う」というつもりで,選択肢の一つに入れる可能性があります。

 

労働訴訟のむずかしさ

ご存じのとおり,日本には労働基準法や労働契約法,労働組合法といった法律で,労使関係が規律されています。

 

そして,日本の法律上は,立場の弱くなりがちな労働者を保護するという観点から,非常に労働者有利な場面が多くあります。実際の裁判上も,紛争に関する証拠は会社が多く持っているはずだという考えのもと,立証責任が会社に負わされてしまうというケースもよくあります。

 

こういったことから,いざ裁判に臨むとなると,どういった主張や証拠を整えれば会社としての正当性が立証できるかというのが,非常に悩ましいケースもあります。

 

また労働訴訟では,法律の論点や裁判所の考え方が専門的で複雑な問題がいくつもあり,問題点ごとに適切な主張を構成するためには,高度な専門知識が必要になります。

 

そのため,もし労働事件で紛争になったら,できるだけ早い段階で,労働事件に強い弁護士にご相談いただくのがベストです。

 

弁護士の有用性

当事務所は労働事件に精通しており,訴訟化した段階でも会社の利益を守るよう最大限の手段を尽くせますが,本来であれば訴訟化する前に,顧問弁護士を採用して労務環境のチェックをしてもらうなど,紛争が起きないように事前に対応しておくことをおススメします。

 

特に中小企業など,これまで弁護士がいなくても経営が成り立ってきた会社にとっては,訴訟とか弁護士というのは縁遠い存在のように思われがちです。しかし,従業員を雇い,外部の会社と取引をしている以上,常に取引や契約のトラブルに巻き込まれるリスクは存在します。顧問弁護士を採用することで,法律的な紛争のリスクを最大限に縮小できます。また,弁護士の持つ企業法務の専門知識は,トラブルを防ぐという「守り」だけでなく,労務管理や取り引きの安全,社内の人材育成など業績をアップさせるための「攻め」にも活用することができます。

 

労働訴訟をはじめとする会社のトラブルをご心配の社長さんは,ぜひ一度,事務所にご相談ください。

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