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ストレスチェックと職場環境

弁護士 平山 諒「24時間働けますか」というのは,昔流行したエナジードリンクの宣伝文句でした。
しかし,多くの人は,24時間働き続けると,体調を崩します。

このコマーシャルが流行した何年か後,私が学生の時分には,「いままで勉強のし過ぎで死んだ人はいない」などと教師から発破をかけられて,かのナポレオンは3時間しか寝なかったという逸話や,「4合5落」すなわち4時間しか寝ないで勉強すれば大学に合格する,などという都市伝説をを刷り込まれたものでした。

ストレスチェックという制度が始まります。

2016年1月から,事業所における健康診断の際に,従業員に過度のストレスがかかっていないかを診察し,職場環境の改善に努めるというものです。

近年では,メンタルヘルスの不調を訴えてトラブルになる方が多くいらっしゃいます。
心のバランスを崩して休業される方や,過労うつ,過労自殺などといった言葉があるように,人間は働きすぎると,体調を崩します。

24時間勤務・・・は極端ですが,長時間の過重労働や,過度にストレスがかかる職務に従事している人に対して,健康に働いてもらうため,会社としても適切な措置を取りましょうというのが,制度の趣旨と言っていいでしょう。

こういった新しい制度ができるたび,「会社は何を準備すればいいでしょうか」というご相談をいただきます。

その相談の本音は,「なんだかよくわからない新しい制度ができてめんどくさい。何をやっておけば,当局から告発されないか」という,制度に対する消極的な捉え方があります。

もちろん,会社に対して新しい制度の導入を進める法律ですから,会社として準備しなければならないことはあります。その意味では,省略できる手間は可能な限り省略したいというのは,正しい反応です。

お勧めしたいこと

しかし私がお勧めしたいのは,新しい制度を導入することで,もしメリットが得られるなら,それは「面倒くさい規制」ではなく,「会社を発展させるための道標」と捉えるという,思考の切り替えです。

たとえばストレスチェック制度は,適切なメンタルヘルスの診断を行うという制度です。たしかに会社としては,従業員の健康状態の把握や配慮など,取るべき措置が増えるのは,あたらしい「規制」でしょう。

しかし,この制度によって従業員の体調管理を行うことで,たとえば従業員の仕事や責任の配分を見直すとか,メンタル不調者が出る前に事前対応できるのですから,急な休職者がでてからの人員補充や引き継ぎ管理などバタバタと追われることなく,組織として事業を継続させることが可能になります。

そして,働いている現場の社員が心身ともに健康でいられるというのは,それ自体で会社の生産性向上につながります。

どんなに受注が多くても,現場が「病んで」いるために仕事が処理しきれないとか,一部の人に責任が集中するために案件の処理に時間がかかるなどしていては,会社としての業績は上がりません。組織内で適切に「ストレス」や「責任」が配分される仕組みができれば,それだけで会社の価値は増大するはずです。

なにより,会社の社員が輝いている,元気で幸せ仕事をしているというのは,企業として非常に望ましい状態でしょう。

そして,皆がハッピーに働いている会社では労働紛争は起きません。職場に不満が無いからです。

ここまで書けば,経営者の方や管理職の方にはもうお分かり頂けると思います。
社員のメンタルヘルスが健康に保たれるのであれば,それで会社として得られるメリットは,非常に大きいのです。

明るく楽しい職場・・・という情緒的な問題ではありません。

会社の生産性を最大限にあげるため,まずは新しい制度を理解し,メンタルヘルスの問題に向き合いましょう。

時代の流れに乗れない企業の行く末は,明るくは無いはずです。

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