コロナ第二波,第三波に備える企業体制(コラム)
コロナ第二波、第三波に備える
新型コロナウイルス感染症の流行を受け、日本中の企業が手探りの対応を迫られています。
緊急事態宣言は解消されましたが、引き続き多数の感染者報告が連日報道されており、コロナ感染症流行の第二波、第三波が来る可能性が高いと言われているところです。
第一波は何とかやり過ごしたとしても、再度の緊急事態宣言や再流行を懸念しておられる中小企業も多くある事かと思います。
そこで、本稿では「コロナ第二波、第三波に備えて」いま企業がとるべき備えを解説していきます。
1 会社の財務体質、お金の問題
まずもってコロナ禍の中で会社存続のハードルになるのが、財務状態の問題です。店舗の営業時間が制限される、外出規制の中で売り上げが減少するという状態の中でも、会社を維持していくにはどうしても費用が掛かってきます。
そこで、資金難の状態を乗り切るために銀行などの金融機関から融資を受けるという対応が考えられます。
現在、銀行や政府系金融機関ではコロナ対策のための融資や相談を数多く案内しており、これまで金融機関との取引や借り入れなど無かった会社さんでも、資金に比較的余裕があるうちに運転資金の融資を検討しておく、というのはぜひ検討すべきでしょう。
融資を申し込む際の手順は、各金融機関によって異なりますが、一般的な融資を受ける際の実際の流れを簡単に示しますと
①融資の申し込みを行う
②資金の使途や経営計画、返済計画を作成する
③融資担当者と面談する
④実際に融資を受ける
・・・という流れになります。
①融資の申し込みは、インターネットやメールで申し込み・面談予約できるところもあるようです。まずは会社の近くの金融機関などに直接訪ねてみるのが早いでしょう。
②経営計画や返済計画などの書類、とくに会社の財務状況を示す決算書類の取りまとめや資金状態の現状をどうまとめるかは、なんとなく難しそうな作業に見えますが、税務申告の際に必ず決算書類などは作っているはずですので、まずはそういった書類を見直しましょう。
融資を受ける際に大事なのは、この申し込みの際の書類作成や面談にあたって、嘘はつかない、ということです。審査を行うのは融資のプロなので、付け焼刃ででっち上げた情報や数字上のおかしな点は、すぐに見抜かれてしまいます。
コロナ禍の中で企業救済の措置で積極的な融資が行われていますが、明らかに不当な申し込みや書類上の不備を目こぼししてもらえるわけではないですから、注意が必要です。
なお、「実際に融資を受けた際の体験談」を別途記事にして投稿予定です。ご興味のある方は後日ご覧ください。
また、情報が錯綜している中で大変ではありますが、持続化給付金や家賃補助をはじめとする各種補助金・助成金を活用することもぜひ検討してください。
インターネット上での申請手続きで行えるものも多く便利なのですが、かえって分かりにくい部分もありそうということで、補助金・助成金の申請手続きの代行を謳う業者も存在するようですが、実際には持続化給付金等の申請はそこまで複雑なものではなく、比較的簡単に行えます。代行業者の中には高額な手数料を請求するところもあると聞き及びますので、もし外部業者を使う際には、料金がいくら発生するのか、十分事前に確認してからご決断ください。
2 人員削減・休業・休職命令の際の問題
⑴ 緊急事態宣言の中で休業、営業自粛を行った会社も多くあったと思います。
とりあえずの所、現状では各業態で営業再開が出来ているようですが、再度緊急事態宣言や営業自粛要請が出たらどうすればいいでしょうか。
まず問題になるのは、従業員を休ませることができるか、という問題です。
アルバイトやパートの社員なら、とりあえずシフトを入れないでおく、あるいは一時的に解雇するというような人員調整をなさっておられるところもあるかもしれません。また、正社員の人でも『この緊急事態なので』ということで、申し訳ないけれども解雇や休職措置、あるいは時短勤務にしたり出勤数を減らしてもららった・・・という場合もあるでしょう。
ですが、もし第二波が来た時には、必ずしも前回のような対応がうまくいくとは限りません。この春の緊急事態宣言の際はまさにだれも予想していなかった「緊急事態」であり、従業員含め皆が混乱の中で手探りの対応をしていましたが、パートやアルバイトでも休業補償(※会社都合で勤務させなかった場合に給料の6割相当を請求できる権利)を受け取ることができるといったことや、コロナを理由にしても正当な理由のない解雇は無効だ、という労働者の権利は当然存在することを、各種報道や情報発信の中で労働者の権利として広く知られるようになってきました。
そこで、会社としては、もし再度の緊急事態宣言や営業自粛の流れになったときに備え、会社を存続させるためにどのような手続きをとればいいか準備しておく必要があります。
⑵ 人員削減はできないのか?
人件費の削減の最も分かりやすいものは、過剰になっている従業員の削減=整理解雇(いわゆるリストラ)と言われるものです。
しかし、法律上整理解雇は、会社の財政状況や解雇回避の努力などの取り組みの結果それでもなおやむを得ない場合に有効となるとされていますが、逆に、会社にあまりダメージのない状態や解雇回避のための経費削減努力などを行っていない状態では認められません。
むしろ、手続きを踏まずにむやみに解雇処分を出すなどしてしまうと、不当解雇だということで逆に会社に対して損害賠償を求められるなど、従業員との法的紛争に発展してしまうリスクすらあります。
そこで、もし人員削減を行う前提で考えるのであれば、事前に弁護士に相談の上、解雇を有効に行えるような会社としての対応をきっちりと行っておくことが必要です。
⑶ 従業員の給料やボーナスを減らすという方法は?
経費削減の一つとして、従業員の給料を減額する、それまで払っていた手当を不支給にする、という手法を取る会社も存在します。
よく誤解をされがちなのですが、従業員の給料は雇用契約や就業規則で決まっているものであるため、会社の一方的な判断でこれを減らすというのは、法律的には認められません。
また、就業規則の変更などで給与体系を変え総額での人件費を減らすという方法も、従業員にとって不利益な規則変更となる場合には、それなりの手続きを取ったうえで対応をする必要があります。
そして、夏や冬のボーナスを減らしたり不支給にしたり・・・という会社も、きっと出てくることと思います。もちろん賞与は会社の業績に応じて変動しうるものですが、会社によっては業績関係なしに「基本給●カ月分が賞与」と決まっているケースもあり、「コロナだから」を言い訳にすればなんでも支払いを免れるというものではありません。
賞与を支払う必要があるのかないのか、従業員との雇用契約内容がどうなっているのか、確認をするのが良いでしょう。
3 社内でコロナ感染者が出たら?コロナ感染者を出さないためには?
もし社内でコロナウイルス感染者が出てしまったら、会社としては直ちに当該従業員への休職命令を出し、自宅での療養を命じること、そして感染状態でほかの社員と接触したことが疑われる場合には当該社員にも診察を受けさせるなどして、社内での感染拡大を防ぐことが肝心です。
どこでも言われていることですが、朝検温をさせ37.5度以上の熱がある場合には出社させない、会社内の換気や手洗いうがいを励行する、可能であればデスク間に仕切りを作ったり時差出勤をさせるなど「密」の状態を避けるような配慮が必要です。まだ本稿執筆時点での裁判事例はありませんが、感染対策を一切取らずに漫然と従業員を出社させコロナウイルスに社内感染させたというようなケースが出てきたとしたら、それは会社としての安全配慮義務違反や労災の事案として会社の責任追及を受けるケースも出てくるのではないかと考えられます。
なお、コロナ関係なしに、高熱があったり病気症状が出ている社員は、病欠させましょう。
4 テレワークの問題
4月5月の緊急事態宣言の中で、いわゆる在宅ワーク、テレワークが見直されました。
テレワークとは、従業員を出社させず自宅で仕事をさせ、必要な会議などは各種ソフトやアプリを用いて電話会議形式でおこなうという手法です。
在宅ワークを導入するときに、なかなか難しいところがあるのは事実です。何が難しいかというと、たとえば従業員がサボっていないかをどう監視すればいいのか、または機密情報が漏洩しないかという問題が懸念されておりましたが、このあたりについては解説記事が出ていますので、そちらも併せてごらんください。
https://www.bengo4.com/c_5/n_11107/
5 人材確保の問題(会社が機能不全に陥らないために)
コロナウイルスの影響で一時的に業務規模を縮小するにしても、いずれは元の事業規模に戻す、となるとやはり戦力としての従業員は確保しておかなければならない・・・というのも事実です。
しかし、近年どの業種でも少子化や働き手不足によって人材難となっている傾向があり、優秀で能力の高い従業員ほど、引き留めておくのが難しいという現象が生じています。
従業員のうちだれかが会社を辞めた場合、あるいはコロナウイルスに感染して数週間ほど出社できないとなったときに、「○○さんがいないとほかの誰も仕事の手順が分からない」という事態だけは避けたいところです。
そのため、会社の重要部分を担っている人材については、一時的に業務量が減少することになったとしても社内で配置転換をして雇用を継続させておくなどの措置は必要です。
また、仮に誰か一人がいなくなってもほかの社員でも仕事が引き継げるよう、バックアップ体制を取っておくことも必要でしょう。
通常であれば、会社を退職する前に後任者に引き継ぎを行うとか、社内で資料を整理してから辞めてもらうなど、業務が円滑に引き継げるよう会社としても手立てが取れますが、緊急事態宣言などの中では引き継ぎがいつでも円滑に行える補償はありません。まさに平時から緊急時への備えが必要と言えます。
また、小規模・個人事業規模の会社だと、社内の事務処理などもそうですが、「社長が倒れたときにだれも手が出せなくなる」という現象が生じます。すなわち、家族経営の会社などは特に、社長が一人で代表取締役として会社を切り盛りしているという場合が良くありますが、もしその社長がコロナになって2週間ほど動けなくなったら、その間の業務は誰が行うのでしょうか。もちろん社長からの指示で従業員が動くということになるのですが、新型コロナで社長の症状が重篤化したとき、社長の代わりに会社経営を行える人物がいるのかどうか、という問題です
これは、単に事業承継の問題のようにも見えますが、実はそうではありません。形式的に「代表取締役が職務を果たせなくなった時に、会社としての意思決定や外部との契約行為を行える第要件を持つ人がほかにいないと、会社は対外的な行動が一切行えなくなる」という問題を含んでいます。代表取締役が動けなくなれば株主総会を開いて別の取締役を選任すればよい、社長の息子さんを新しい代表者にすればいい・・・等とも考えられますが、そもそも株主は誰になっていますか?家族経営や小規模の企業の株主はだいたい社長さんが一人で全株式のほとんどを握っていたりしますので、結果、株主総会の招集や決議が得られなくなる、倒れてしまった社長のピンチヒッターの選任もできない・・・という現象が起きてしまいますね。
これへの備えとしては、事前に家族の誰かを取締役に選任しておくとか、社長の業務を代行できる人材を準備しておくことになるでしょう。
家族経営で事業を営んでいる会社さんや、オーナーが一人で取り仕切っている会社などでは特に、万が一の時への備えが必要です。
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