示談 とは

示談とは

トラブルが起きた時に、双方が話し合って納得して解決することを、示談といいます。

最近、この「示談」について世間がホットになっているようですが・・・

もちろんこのブログは特定の事件についてコメントする趣旨ではありませんが、一般的な話として、示談すれば一連の紛争を解決することになり、基本的に蒸し返すことはしないという前提での合意ですから、その内容はよく注意しなければなりません。

例えば当事務所がよく扱うものだと、サービス残業や不当解雇、あるいは浮気などといった事案で解決金を支払って示談する・・・というようなものが多いですが、よく「このことをほかの誰にも言わない」という、守秘義務、いわゆる口外禁止条項というものを盛り込むケースがあります。

たとえば会社と従業員の紛争で、未払いだった残業代(サービス残業)を請求したとします。

会社としては、働いていた残業時間や残業代未払いが事実であれば、裁判になれば支払命令が出るのは必定なので、それなら先に(あわよくば少し値引いた金額で)払って早期に解決しよう、と目論見ます。もちろん早期に示談で解決いて残業代の(一部だけでも)支払いがあれば、従業員としても訴訟を起こさなくて済むので、これは双方にとって穏やかな解決となります。

ただ、「弁護士に依頼したら会社が残業代払ってくれるぞ」というのを、ほかの従業員が知ったら・・・皆がこぞって残業代請求を起こし始めたら、会社といては「こと」なわけです。

なので、「そこまで言うなら分かった、過去の残業代を支払うから、後生だからほかの皆には黙っていてくれ」という話になります。この約束が、いわゆる守秘義務・口外禁止条項というものなのですね。

一般論として、仮に事実であっても、相手にとって不利な出来事をむやみやたらと吹聴すると、それはそれで問題が起きますし、わざわざほかの人をたきつける必要はないでしょ・・・ということで、労働事件であればこういう約束を取り付けることも、私はよくあります。

ただ、これが暴力や異性問題などの慰謝料となると、どうなんでしょうかね。

もちろん、みっともないこと・恥ずかしいことなので黙っていてほしい、今後の生活に影響が出ないようにしておきたい・・・というニーズはあるので、口外禁止条項を入れるべき事案もありますが、まあ言ってしまえば、口止め料的な意味で慰謝料を増額することになるのでしょう。

 

ただ、悩ましいのが、示談書を取り交わしたからと言って、人の口に戸板は立てられないとでも言いますか、物理的に「口をふさぐ」ことはできないという点です。

せっかく示談金を払って「人に言わない」という約束をしたのに、その約束を破ってペラペラ人に話し出したら・・・事後的に「約束違反だから債務不履行に基づく損害賠償請求だ」という話になってきます。

帰ってくる金額も、実際に約束違反でもってどのくらい損害が出たというのか立証するのは難しいこともあるでしょうし、(ケースにもよりますが、普通に考えて、単純に示談金全額が戻ってくるということにはならないでしょう。逆に示談金以上の損害が生じることもあるかもしれませんが)というかお金が帰ってくればよしという問題でもない気がするので、すごくすごく難しい問題ですね。

また、約束をした本人はもちろん守秘義務を負いますが、示談前に相談していた誰か(友人とか家族とか)は守秘義務を負うものではありませんから、こういう人たちがあとから誰かに話をして話が広がっていく・・・というのも、容易に想定されるところです。(もちろん彼らも、むやみに人の名誉を傷つければ、それ自体が名誉棄損になったり不法行為になったりする可能性は理論上ありますが)

もっといえば、私が過去に経験した事件で、当事者間では示談で解決したのに、その片方の親が「こっちとの話はまだ終わっていないぞ」と、子供の喧嘩に親が首を突っ込んで紛争を蒸し返してきたという最悪なケースすらありました。ほとんど難癖でしかないですね、こんなの・・・守秘義務どころか示談自体何の意味もなかったくらいの話になって、非常に不愉快な思いをしました。

なので、示談をするときには、その約束内容はもちろん、もしその約束を破ったらどいういうペナルティになるか、相手が約束を守らない時のリスクも踏まえて、抜け道もふさいで、十分気を付けないといけないわけですね。そもそも示談通りにお金を払ってこない人、約束を守る気もないのに示談で収めてそのまま逃げ仰せようとする人とかもいたりして・・・これは、弁護士業務の中で悩ましい典型例です。人間不信になりそうなことも良くありますが、私だけでしょうかね?

 

示談って、難しいですね。というお話でした。

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