雇止めの問題(使用者向け)
契約社員ならいつでもクビにできる?
雇用期間を1年と定めて,契約を更新しているというような形で採用することを,契約社員などと呼ぶことがあります。
雇用期間が1年と定められていますが,きちんと働いてくれるのであれば翌年も契約を更新するとか,何年か勤めたら正社員登用もある,という仕組みをお持ちの会社もあるでしょう。
逆に,会社の契機が悪くなったら契約社員の契約を更新せず辞めてもらう,という見通しもあるかもしれません。
しかし,契約社員の契約を更新しないという選択が,常に有効とは限りません。会社には,契約社員の扱いについては日ごろから注意が必要です。
雇止めとは?
「やといどめ」,という言葉を聞いたことがおありでしょうか。
雇うのを止める,という言葉通り,契約社員の更新をしないということです。
現に雇用契約に期間がついているのですから,放っておいても自動で期間が延びるという事はありません。しかし,特に問題が無ければ契約が更新されるとか,「形だけは1年契約だけどずっと働いてもらうから」と約束していたような場合には,労働者の立場としても,来年も同じ職場で働けるのだという期待が生じます。
このような場合に,「契約更新をしない」という会社の判断が権利濫用だとして,期間満了後も,従業員の地位が継続してしまうという場合があります。
具体的には,数十年も契約更新を繰り返しており,来年も同様に更新がされるという期待が生じた場合や,来年以降の更新を使用者が約束するなどして期待を生じせしめた場合が,これにあたると言われています。
このように従業員に契約更新の期待が生じると,立場としては正社員と同じになり,解雇するには相当の合理的な理由が無いと認められないという事になりますから,労務管理上は大問題になってきます。
使用者は何に気をつけるべきか
雇止めが無効とならないため,契約社員を採用するときには一定の注意を払う必要があります。
契約書の記載内容
雇用期間を1年と定める,というのはよくありますが,そこから先を意外に忘れがちです。
たとえば,「勤務態度に問題ないときは契約更新できる」,などと書くことがあります。こういったあいまいな書き方をすると,原則的には契約更新されるのだという期待が生じる内容に読まれかねません。そこで,「原則は期間更新はしないが,会社が必要と認める場合には更新の協議ができる」とか,甲信をする際にはかならず数か月前までに契約書作成など所定の手続きを取るなどといったルールを定めておくのが良いでしょう。
また,継続して5年以上採用していると,労働者が望んだら期間の定めのない契約に転換する,というルールがあります。1年契約の更新を繰り返して5年以上の雇用になってしまわないよう,更新回数の上限を定めておきましょう。
日常の評定の管理
契約更新をしないというのは,つまり勤務態度や成績が良くない場合が多いという事になります。しかし,雇止め無効が争われる事例の労働者の主張は「自分の勤務態度は問題が無かった,なのに一方的に雇止めをしてきた」という内容が典型です。
本来は契約を更新しないことに理由など必要ないのですが,労働審判や訴訟で争われた際にこの点が争点になる事は良くありますから,契約更新をしない理由は労働者の成績不良だという事を証明できるように,勤務中の態度や成績は適正に管理をし,表知恵の理由も確認できるように,適切な労務管理を日ごろから心がけるのが良いでしょう。
リップサービスに注意
社員に働いてもらうモチベーションを上げるために,「今後も頑張ってもらうからね」とか,「君には期待しているよ,これからもよろしく」などと激励の言葉をかける上司というのがいます。
もちろん,部下のモチベーションを高めるためにコミュニケーションを取るのは良いのですが,「今後も頑張ってもらう」などと,来年以降の契約が更新される前提であるかのような発言をするのはNGです。この時点で契約更新への期待が生じたと言われてしまうと,いざというときに雇止めの効果を争われてしまう危険が出てきます。あくまでも,今年の契約期間をがんばれば,来年の契約もできるかもしれない,という程度にとどめておくのが良いでしょう。
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