労働事件における慰謝料
『労働事件における慰謝料』
東京弁護士会労働法制特別委員会 (著)
労働事件における紛争では,解雇の有効性や業務命令の適法性を争うと同時に,慰謝料や賠償金を請求するという内容のものもあります。
この請求金額ですが,たとえば残業代のように,計算ソフトで導くことのできるものもあれば,必ずしも明確な計算式の存在しない,精神的苦痛に対する慰謝料という問題もあります。
たとえばパワハラを受けた。不当解雇によって苦しい思いをした。そのような事件で,どのくらいの慰謝料請求が裁判で認められるか。
これまでは,弁護士の経験と勘で,だいたい300万円くらいとれるんじゃないかとか,人が死んでるんなら2800万円くらいじゃないか,といった,いわば直感的なアドバイスをする例もあったかもしれません。
しかし,慰謝料の額の見通しというのは,示談に応じるのか,法廷闘争に持ち込んででも争う意味があるのかといった重要な勝負の分かれ目ですから,本当はもっと緻密に,戦略的に見通しを立てる必要があるのだと思います。
私たちは,東京弁護士会労働法制委員会の誇る優秀な若手弁護士数十名の時間と手間を惜しまず,「人海戦術」でここ10年間の労働事件の判決を網羅し,慰謝料の請求額と認容額,事件の概要を取りまとめ,同種事案での慰謝料額の「相場」を,統計的に明らかにすることに成功しました。
この知識の集約によって,慰謝料がどのくらいになるのかという,目に見えなかった相場観を可視化し,相談者様により良いアドバイスができることになりました。
編集作業は非常に骨が折れるもので,特に取りまとめ役をお引き受けくださった先生方には非常に多くのご苦労をお掛けしましたが,労働法制特別委員会の宝といっていい,価値の高い成果物になったと自信を持っています。
当事務所でも,本書をもとに法律アドバイスをすることがあり,実務的にも価値の高い一冊です。
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