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詐欺について(うまい話にはご用心)

いつの時代にも、いわゆる詐欺はなくなりません。

しかも、時代を経るごとに様々な手法が生み出され、新たな被害者が生まれています。

今日はそんな詐欺について解説していきます。

 

1 詐欺とは

 サギという言葉はよく知られていますが、そもそも詐欺とは何でしょうか。

刑法の解説書によると、詐欺(刑法246条)とは、欺罔行為に基づいて人を錯誤せしめ、これによって金員を交付せしめて利益を得るもの、などと解説されています。

 もちろん犯罪です。

 また、民法上にも詐欺について規定があり、詐欺による意思表示(騙されて行った契約、と理解してください)は取消し可能とされています。(民法96条)

 つまり、人に騙されて契約をさせられた、金をとられたという場合には、犯罪として告発できますし、契約を取り消して返金を求める権利が生じます。

 

2 どんな詐欺があるの?

 サギには様々なケースがあり、一概に「これが詐欺だ」と列記して示すことは非常に難しいのが実情です。

 少し昔の時代には、「このツボを買わないと不幸になる」というような霊感商法であるとか、いわゆる「マルチ商法」や「ワンクリック詐欺」など古典的な詐欺が世間を騒がせた時代もありました。

 最近では、「オレオレ詐欺」「振り込め詐欺」といった被害が多発しており、こういった言葉自体は聞いたことのある方も多いでしょう。広い意味でいえば、資産形成のつもりで有名な会社の株を買っていたら、その会社が粉飾決算をしていて株価が暴落して大損をした・・・というのも、詐欺被害の一例と言えるかもしれませんね。

 また、近時報道されているところでは、「裁判所」や架空の官庁を名乗り、「あなたに裁判が申し立てられました、訴えを取り下げてほしければ7日以内に電話をください」などというハガキが届いて、詐欺グループのアジトに電話をかけさせ、その中で個人情報を引き出すとか支払いをさせる等と言った手口も増えているようです。

 【未確認情報ではありますが、当事務所の弁護士が個人的にフォローしているファンの絵師さんのツイートで、「他人の携帯電話使用料の10%が収入として入ってくる。ただし契約料は数十万円かかる」というような、とんでもない詐欺の勧誘が喫茶店でされていた・・・という事例も報告されていました。人の電話代で儲けが出るのは電話会社くらいなものなので、傍で聞いていれば「そんな話あるわけない、どう考えても嘘だろう」と思いそうなものですが・・・これに関しては又聞きの話なので推測の域を出ませんので、噂程度の話としてしか紹介できませんが、ただ、どう考えても、第三者の使用留守携帯料金の1割が自動的に手数料として自分に入金されるというような高利潤・ノーリスクのビジネスモデルがこの世に存在するとは思えませんし、そんなうまい投資方法が喫茶店で軽々しく勧誘されるということは有り得ないでしょう。】

・・・これらに共通しているのは、真実と異なる事実(ウソ)を相手に信じ込ませて、判断能力が鈍ったところをついて高額の契約を結ばせるとか、多額の支払いをさせるという手法です。

 

3 詐欺犯罪の実例

 まさかそんな犯罪に自分が巻き込まれる事なんてないだろう、と思ってしまいますが、こういう犯罪行為に狙われてしまうという危険は、案外身近に潜んでいます。

 その証拠に、当事務所でもこれまで、次のような詐欺犯罪に関する相談を受けてきました。(当事務所で受けた実績のある相談の、ほんの一例です)

 例1 サッカーくじを確実に当てるというノウハウを提供している。教材代が50万円かかるが、クジに当たることですぐに回収可能だから、いますぐサラ金で金を借りてきて契約してください。

 例2 ネット上の出会いサイトで男性とチャットするだけで収入になります。ただ、会員登録のために最初にポイントが必要なので、ポイントを購入してください。来月から換金可能になるので、一か月待てば楽に稼げます。

 例3 あなたに対する裁判が東京地裁に起こされました。取り下げのためには所定の手数料を払ってください、という法務局訴訟管理部(仮)なる架空の組織からのハガキが届く

 例4 ○○さん(有名なテレビタレント)があなたの支援をしたいと申し出ています。いますぐ電話連絡をして、手数料を払ってください。

例5 ある土地を購入したら、すぐにそれを第三者に転売できます。そこで売却益が上がり、儲けることができます。土地を買ってください。今すぐ手続きをしましょう、早い者勝ちです。

 ・・・こうしてみてみると、いかにも「うまい話」を仄めかして金を支払わせようとするとか、不安を煽り立てて金を払うように仕向ける、というやり方が分かります。

 「お金が稼げる」とか「裁判になる」といった衝撃的なフレーズで、聞く側の判断力や思考力を奪っておき、それに乗じて振り込みやおかしな契約をさせる、というのが、常套手段だというのが分かりますね。

 

4 被害を避けるためには?

  まずは被害に遭わないようにするのが最善です。では具体的にはどうすればいいのでしょうか。

  いわゆる「オレオレ詐欺」「振り込め詐欺」といった典型的な事前の対応方法は各所にて注意喚起されているので、本稿での紹介は割愛しますが・・・大事なのは、「契約をしたりお金を払う前に、一度落ち着いて内容を見直してみる」「事実確認を怠らない」「怪しいと思ったらその場で契約はせずに、一度弁護士や警察に相談をする」といったことが、被害を避けるための最善の手段だと考えます。

  大きな契約であればあるほど、「その場で即決即断」というのは、避けたほうが良いでしょう。よくよく考えてみれば、一刻一秒を争ってその場で契約を求められる、今すぐに振り込みをしないといけない、契約自体が早い者勝ち・・・というのは、それ自体おかしな話であることが多いです。

  もちろん、本当に「今日中に振り込みをしないといろいろな手続きが間に合わない」という現象は社会生活上起こり得る話なので、それ自体がすべて違法とまでは言いませんが、「一度持ち帰って弁護士に相談をする時間も無いほど切羽詰まった儲け話」が、軽々しく存在するとは、なかなか思えません。

 

5 なんで、こんな詐欺が横行するの?

  いわゆる詐欺事件は、いつの時代にもあふれかえっています。

  なんで詐欺被害がなくならないのかと、素朴に疑問に思うところですが、想像するに、警察による捜査・取り締まりと詐欺犯との「いたちごっこ」になっているからなのではないでしょうか。

  もちろん警察の方も、こういった悪質な犯罪を撲滅するために日夜努力をなさっておられるのですが、どうしても犯罪捜査には物的な限界もあります。今後も、すべての犯罪行為を事前に防ぐというのは、難しいのが現実でしょう。

  むしろ、私たちの立場とすれば、「おかしな話には軽々しく乗らない」「自分の身は自分で守る」ということで、自衛する手段をもって賢く生きていくことが求められるのかもしれません。

  ただ、いざ詐欺の標的にされてしまうと、なかなかその場で正確に物事を判断して自衛するというのは、難しいことがあるというのも実情です。

  詐欺のターゲットになってしまうのは、たとえば電話帳や住所録に載っている人、場合によっては「詐欺にあったことがあり騙されやすい人」というリストに片っ端からアプローチをして、100件のうち1件でも騙せればOKというスタンスで無差別に行っているものもあれば、個別にターゲッティングをして詐欺を試みてくるケースもあります。

  実例として当事務所で取り扱った内容のものとしては、このようなものがありました。

 ⑴ フェイスブックやツイッターなどSNSで知り合った人に、喫茶店で会おうなどと声をかけて、その場で複数人で詐欺話を持ち掛けて断りにくい状況に追い込む

 ⑵ インターネット上で「儲け話」の宣伝をして、興味を持った人に執拗にアプローチしてくる

 ⑶ 友人同士のパーティや勉強会・セミナーに来てみないかと声をかけて、いざ行ってみると悪徳商法の勧誘会だった・・・

  ・・・というような内容で、詐欺に取り込もうとしてくるケースがあるようです。知っている人の誘いがきっかけになっていて警戒心が薄くなっているところに付け込むとか、お金に困っているという状況につけんで来るという手法をとられると、こちら側としても、その場で冷静に判断するというのが難しい状況に追い込まれてしまうというのは、避けにくいことも有るでしょう。

 

6 詐欺にあったらどうすればいいのか?返金を受けるには?

  まず、「詐欺にあったら警察」「消費者センターに相談しよう」「弁護士に頼めばいいんでしょ」・・・というような考え方の方も多くいると思います。

  実際、自分が被害に遭ったらすぐにきちんとしたところに相談をするのは大切です。しかし、「相談すればすべて返金を受ける事ができる」とも限らないのが実情です。

  私たち弁護士の間でも、振り込め詐欺などで犯罪に使われている口座がある場合には金融機関に通報して口座凍結を試みるとか、相手方に返金を求める内容証明を送る、クーリングオフの手続きをする・・・という古典的なやり方はいまでも有力は手法と考えられていますが、現代社会においては犯人側の手口も巧妙化しており、対応に苦慮することが多いのも事実です。

たとえば振り込め詐欺などの犯罪に使われる口座に入金があり次第すぐに引き出すというふうにされてしまえば、口座凍結前に資産を引き上げられてしまうので、返金を求めようにも「お金がどこにもない」という状況になりかねません。また、そもそも詐欺犯がクーリングオフしたから返金をするというような良心的(?)な業者とは限りませんし、インターネットサイト上での詐欺などでは、事業者の住所がわからないケースも多く、そもそもアプローチすら取れなくなるというケースも散見されます。

  場合によっては、刑事告訴して警察の捜査による情報収集を試みる、そのなかで示談金として返金を受けるという事も考えられますが、警察による捜査は必ずしも個別の詐欺被害の回復のために行われるものではないので、すべてのケースでうまくいくとは限りません。

  私の事務所の実績として一度うまくいったのは、詐欺によって支払ったのがクレジットカードでの決済だったので、すぐにカード会社に通知を出して取引を取り消して、詐欺で購入させられた物品の支払いをしなくて済んだ・・・というようなケースは存在します。が、これは一応しっかりとしたクレジット決済の会社が介入していたことで事なきを得たのですが、これが銀行振り込みだったら、おそらく返金を得るのは難しかったでしょう。(口座の持ち主が分かっていればそれなりに対応方法もあるのではないかとも考えられますが、他人名義の架空口座を使われてしまうと、もう手も足も出ないという事態も容易に想像できます。)

  いずれにしても、だまし取られた金を取り戻すというのは、言うほど簡単にはいかないのが現実、ということは、認識しておくべきでしょう。

 

7 まとめ

  この記事では、詐欺にあったらどうすればいいのか、という対応方法や、そもそもどんな詐欺があるのかという実情を、法律家視点で書いてみました。

  人を騙して金をとるというのは、間違いなく犯罪です。「騙す詐欺犯人」と「騙された被害者」とでは、犯人に非があるのは間違いありません。ですが、だからといってだまし取られたお金が確実に戻ってくるかというと、難しい部分もあるのも現実です。

  サイン一つで簡単に儲けられるような話を鵜呑みにしないこと、怪しいと思ったらサインする前に弁護士に相談する・・・といった古典的で王道の方法で、自らの財産を守るという意識を高く持つことが、自衛のための最も現実的な方法かもしれませんね。

  結論:うまい話にはご用心。

 

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