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イラストレーター(絵師)の法律問題

どうも、アニメ・ゲームと言ったサブカルにも興味がある弁護士です。

インターネット、主にツイッターやユーチューブをネットサーフィンしていると、最近は非常に多くの方がイラストや自作アニメを投稿しています。

読者として閲覧する分には非常に楽しい趣味なのですが、たまに漏れ聞こえてくるのが、イラストレーター(絵師)さんの働く環境が非常に苦しい、出版社や納品先などの取引相手とのトラブルが起きた・・・という問題です。

安心して作成に注力していただけるため、イラストレーター、絵師さんの活動にかかわりそうな法律問題を解説します。

 

1 原稿料のとりきめ

 完全に趣味で絵を描いているだけなら「原稿料」は発生しないですが、高いクオリティの作品を納品してお金をもらう、という形態の働き方の方も当然いらっしゃいます。

 ここで問題になるのが、原稿料、いわゆる代金の取り決めです。

 イラスト一枚いくら、という料金を最初に決めておかないと、「え、タダで書いてくれたんじゃなかったの?!」と、思わぬトラブルになりかねません。

 もちろん、ちゃんとした出版社とのやり取りであれば、そもそも有料なのか無料なのか、という基本的な問題でトラブルになることは少ないかもしれませんが、おもに知人・友人からの依頼であるとか、「会報誌にちょっと挿絵を描いてよ」と、気軽に頼まれるケースだと、この手のトラブルは起きがちです。

 しかも、なまじ相手が知り合いだったりすると、なかなか表立って料金の請求というのもしにくい側面もあります。

 そうなると、結局は泣き寝入り、その後の付き合いも見合わせるとなると、何のために精魂込めた作品を書いたのかわかりません。

 お互いに嫌な気持ちにならないよう、イラスト作成の発注を受け付ける段階で、「1枚いくら」と、料金は明確に提示しておきましょう。

 理想的に言えばイラスト作成依頼契約書を取り交わしておくのが一番ですが、そこまでいかなくとも、依頼を受け付けるメールの段階で、「納期はいつ、料金はいくら、支払日はいつ、振込先口座はどこどこ」と、具体的な数字を明示しておくだけで意味はあります。

 あとは、イラストの納品と同時に、請求書を出して支払いを求めましょう。

 

2 ラフの提出、手直し

 イラスト作成を受注する際に、どんな作品を作成するのか、依頼者と打ち合わせをします。

 どんな絵でも全く自由で構わない、とにかくあなたのイラストが欲しい!というステキなお客様相手なら、作品のコンセプトや用途だけ聞いてイマジネーションを働かせればいいのですが、実際には、何らかの用途やイメージに合った作品を作ってほしいという注文者の狙いもあるはずです。

 そこで、いきなり作品の本格的な着手に入る前に、「ラフ案」「完成品のイメージ」を提示し、完成形のイメージの共有をしておくのが良いでしょう。

 そうすれば、「あー、ホントはこういうのじゃないんだよね、もっとこう○○なイメージで作れないかなあ・・・作り直してください」という、納品後の無茶な要求を事前に回避することができるでしょう。

 また、作品を作っても、色違いや、いくつかのバリエーションも作ってほしい、または構成を変更してほしいという、注文者の要望に応じたリテイクを作ることになるというケースもあるでしょう。

 もちろん、多少の手直しや、簡単なバージョン違い(差分)を作って納品すればその分顧客満足につながるので、次回の中,門につながりやすいという側面はあるでしょう。しかし、あまりにも何度も作り直し、手直しを重ねないといけないとなると、料金に見合わない手間を取られてしまうという事態も出てきかねません。

 イラストという芸術作品を作る性質上、「ここまでやればOK」という線引きが難しいのが悩ましいところではありますが、これを回避するために、契約段階でリテイクの回数の上限、何回を超えての手直しは追加料金、などといった条件を取り決めておくのが望ましいでしょう。

 

3 いざ納品

 作品を完成させて、納品します。

 もちろん紙に書いた絵を納品することも有るのでしょうが、最近はデータで入稿というのが一般的でしょう。

 ここで、メールでのデータ送付だと、本当に相手に届いたかどうか、期限内に納品できたことになるのかどうか、確認がとり切れないということも有りますので、注意が必要です。

 データ容量の大きい画像だと、メールが迷惑メールフォルダに入ってしまって届かないとか、サーバーではじかれて相手に到着しないという事態も考えられます。

 そこで、納品を確認してもらったら、相手から受領の連絡をもらうとか、データ自体はクラウドの共有システムにアップしてそのアドレスを送る、など対策しておくと安心でしょう。

 

4 著作権?!

 イラストの著作権が誰に帰属するのか、というのが案外見落としがちな問題です。

 これについても、事前に取り決めておくのが望ましいですが、具体的にはイラストの用途や転載をどこまで認めるか、という問題です。

 もちろん、会社のロゴマークを納品したらその会社のHPで使われるとか、商品につけて販売される、といった本来の使い方であれば、あまり問題にはならないでしょう。

 しかし、せっかく愛情を込めて描いたイラストが、本来の用途と違う使い方をされてしまう、というのは悲しいですよね。たとえば子供向けのイラストを描いたつもりなのにアダルト用に使われてしまうとか、あるいは個人利用に限って公開していたイラストを商用に転用されてしまうとか・・・

 逆に、著作権ごと納品したイラストを自分のサイトで公開していたら、納品先から「イラストの使用を差し止めるよう求められる」なんてこともあるかもしれません。

 イラストの使用の差し止め請求、場合によっては損害賠償請求など、法的な紛争になるまえに、作品の権利の扱い方には、十分注意したいところです。

 

5 クラウド・インターネット時代のビジネスとは

 最近は、インターネット上のサイトでイラストを募集したり、SNS経由でダイレクトに依頼が来るという事もあるようです。

 もちろん、これらの現代的なツールで人脈やビジネスの幅を広げるのは好ましいのですが、実際にあったことも無い相手との契約になると、やはりどこに落とし穴が潜んでいるか分かりません。

 場合によっては、イラストの納期が遅れたからと言って損害賠償請求をされてしまうとか、約束した料金が払ってもらえない、といったトラブルに遭遇する方も、少なからずいらっしゃいます。

 イラストを描いて料金を得るというのも、立派なビジネスです。ビジネスや契約の世界では、不幸なことに契約上のトラブルや紛争に巻き込まれてしまうというのも、また事実。

 そんなときは、お気軽に、近くの弁護士に相談をしましょう。

 ふだん弁護士に相談をするという経験がない方だと、最初は「こんな内容で弁護士に相談していいのかしら・・・?」「自分にも落ち度があると、怒られるんじゃないかな」「なんか怖い」と、どうしても敷居の高い存在に思えるかもしれません。

 しかし、比較的若手の先生で話をしやすい弁護士さん、相談料もそこまで高くない法律事務所(通常は30分5000円、初回相談は無料という所もある)も、多く存在します。

 契約やお金の問題で頭を悩ませている時間を、専門家に相談して解決してもらえれば、その分新しい作品にとりかかることができるので、イラストレーターとしての本分に注力出来ますよね。

 さあ、あなたも、イラストレーター・絵師の法律問題でお悩みなら、迷わずにお近くの弁護士へ相談しましょう!

 ※当事務所は東京都府中市にありますが、ご来所いただける方であれば、お住まいの地域を問わず相談を受け付けています。

 ただ、一回の相談で終わらずに継続相談・訴訟等の手続きの受任という事態を考えると、ほんとうはご自宅や職場の近くの弁護士のほうが、いろいろな意味で安心できるかもしれませんが。

 本稿は、楽しいイラストを作ってくださるイラストレーターさん、絵師さんが巻き込まれそうな法律トラブルを一般的に解説することで、みなさんが安心して作品に取り組めるようになれば、という思いで作成しておりますが、これらの方のすべてのトラブルや解決方法を網羅したものではありません。また、個別の紛争の解決を確定的にお約束するものでもありません。

もし実際にトラブルが発生したら、すぐにお近くの弁護士に相談をしてください。

 

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