【シークレットページ】鬱になったバリスタ【1-3】

3 少ない睡眠時間と小遣い事情

  重大な事件を同時進行で複数処理するのが弁護士の常である。そうすると,どうしても僕たち弁護士の仕事は忙しくなりがちだ。

  意外に思われるかもしれないが,弁護士のオフィシャルな営業時間は遅い。事務所にもよるのだが,一般的な法律事務所の営業時間は朝9時や10時ころスタートとなっていることが多い。これは,裁判所の開廷時間が朝10時からとなっているのに合わせているらしい。※

  しかし,実際にはそんなに悠長にしていられないことも多い。裁判所の営業時間よりも朝早くに出勤して,溜まっている事件の書類作成や電話対応,メールのチェックを済ませてから,依頼者との相談,相手方との交渉,他の弁護士との打ち合わせ,裁判所への移動・・・一日が過ぎるのは早い。やることもたくさんある。場合によっては昼食なんて食べられないことも珍しくないし,朝食なんてここ数年食べた記憶がない。

  その一方で,夜の付き合いも多い。お客さんの接待や,弁護士同士の打ち合わせ。オフィスアワーに相談に来れない相談者がいれば,時間外でも対応する。地域の活動に参加している弁護士にとっては,仕事終わりの時間帯に会議やボランティア活動を行うことも少なくない。※

  当然,帰宅できる時間も夜遅くなりがちだ。僕のように3歳の子供がいると,子供が寝静まった後に帰らないと,せっかく寝入った子供を起こしてしまうことになるので,最近は,夜9時までに帰宅できない場合には夜11時以降まで家に帰らないことにしている。

  そして,夜11時過ぎに帰宅した後も,持ち帰った仕事をこなさなければならない。スマートフォンやノートパソコンというのは,どこでも仕事ができて便利だが,本当に罪深い発明だとおもう。スマホとパソコンのせいで,弁護士は,24時間弁護士でいることを強いられている。

  これだけ働いていても,実は弁護士の収入は,思ったほど多くはない。統計だと,弁護士の平均収入は1000万円前後だとされていることが多いが,弁護士の中にも格差はある。もちろん大ベテランで大手の顧問先をいくつも抱えている弁護士は大金持ちなのだろうが,僕のような,街中に個人事務所を開いている一般的な若手弁護士の実入りは,そこまで多くはない。実際うちは小遣い制で,毎月3万円の小遣いの中から,仲間との飲み代やたばこ代を捻出している。そう考えると,企業に就職していった大学の同級生たちと,実際の生活はさほど変わらないのかもしれない。

  こういった現実的な環境が,のちに,僕の心と体をむしばんでいくことになるのだが。

 

続く

 

※解説

※もちろん人によるが,だいたい弁護士は朝遅く,夜遅い。たぶん,受験生のころからの夜型の生活が身についているからじゃないかと推測している。働く時間も実はフレックス(というか自分の事務所なので自分で決めていいはず)なのだが,オフィスアワーに事務所にいないとお客さんがつかないし,どれだけ長時間労働しても残業代はつかない(当然!)し,過労死しても労災にならない。僕たちは労働者でなく事業主だからだそうだ。週40時間×4週が基本としてみたとき,これを超えたところが時間外労働というなら,ざっと100時間くらいなら余裕でオーバーしている気がするのだが。。。(一般の労働者でこのくらい時間外労働があると,死亡した時には労災と認定されやすいが,弁護士でそんな話は聞いたことがない。過労死することは普通にありそうだけど,そこには何の保障もないので,自分で死亡保険に入っておかないと,家族が路頭に迷うことになるのだ。)

 このあたり,労災事件や労働法分野を扱う弁護士としては,自らの労働環境が法で守られていないことに,名状しがたい複雑な感情を持つところである。

 

※弁護士に相談したいのですが,昼間は仕事があるのです,休みは土日なので,週末か夜に相談したいのです・・・というケースは多い。こちらも仕事なので,可能な範囲で対応することにしているが,弁護士だって平日に仕事で週末が休みなのは変わらないので,いったい我々は世間からどう見られているのか,一度聞いてみたいところではある。

・・・ところで「平日にどうしても休みが取れない」っていう人って,風邪ひいたり花粉症になったりしても休日・夜間診療しか受けないんですかね?それとも,病院には行けるのに弁護士の所には行けないんですかね??本当に疑問です???

※むかし,依頼を受ける際に着手金などの料金が発生すること,料金を頂けないと受任・着手できないことを説明したら,「金の力ですね。結局は金なんですね」と悪態をついて帰っていった相談者がいた(出入り禁止にしたが。)

また,無料相談会や料金を取られない電話相談(ほんとは電話相談はやってないけど,ちょっとだけ聞きたいという電話を断るわけにもいかない)には何度もやってくるのに,次回から有料だと言うとそれっきり連絡の途絶えた人もいる。

無料相談だけで解決するのならそれは一番良いことなので,それなら文句ないし,簡単な電話のアドバイスだけでも役にたっているのなら掛け値なしに嬉しいのですが,そういうのとも違って,結局タダだから聞いてみてるだけ,お金がかかるならもういいです,=平山のアドバイスには相談料を払う価値が見いだせないのです,という事に見えてしまうと・・・ねえ。ほんとに,僕たちは一体何だと思われてるんでしょうか。

※府中ピース・ベル法律事務所では,初回相談は無料にしていますが,これはあくまでも,弁護士に相談する際の垣根を低くして,必要な人に必要な手助けをするという目的のための取り組みとして行っているのであって,弁護士の知識と時間が無料という意味ではありません。

最近,弁護士会でも法律相談の無料化を推進する動きがあったりしますが,本来は医師の診察やキャバレーの接待と同じく,プロ・専門家によるサービス提供は有料なものだと思います。たとえ原価がかかってなさそうに見えてもね。

物を買うときやたら「原価」にこだわる人とかいますが,たしかに弁護士のサービスには仕入れ値などの原価はかかっていません。インターネットの恩恵で最近は「知識自体は無料」みたいな風潮もあります。しかしね,たとえば寿司屋に行って,魚を持ち込んだからタダで捌いて刺身にしてくれと言ったら,追い返されて塩まかれるんではないですか?キャバレーのお姉ちゃんに,指名料も払わず店外でデートしようと持ち掛けても,普通に嫌われて断られるんじゃないですかね?・・・つまり,そういうことです。

※昔,ある画家が絵の作成を頼まれて,30分で書き上げて料金を請求したら,「30分しか掛かってないのにこの料金は高すぎる」と言われたので,「この絵を描くためにかかった時間は30年と30分だ」と言ったとか言わないとか。つまりこれまでの人生の中で30年かけて学んできた絵の技量や知識,人生経験のすべての成果物がこの作品だ,と,言う意味なのですが。私たちのような「仕入れ値を伴わない専門サービス」にとって,非常に示唆するものの多いエピソード。(30年という数字は例ですが)一回くらい言ってみたいなこれ。


ご相談は法人の方も個人の方も無料 042-319-8523 府中ピース・ベル法律事務所

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