コラム(コロナの影響と労働問題)
コロナ騒動と労働問題について【内定取り消しの問題】
1 内定取り消し
新型コロナウイルスの流行の影響により、さまざまな場面で社会生活や企業活動にも影響が出ています。
とくに、今回の騒動が3月から4月にまたがる、新年度の開始時期に重なったことも有り、「コロナウイルスの流行を原因とする内定取り消し」という現象が生じているところがあります。
内定取り消しは有効なのか?
内定とは、大学や高校の卒業などを条件に、企業で採用(雇用)するという、条件付き労働契約の締結とされています。
そのため、内定の取り消しと言われる現象は、法的には一種の「解雇」と解されており、使用者からの理由なき内定取り消しは認められず、合理的な理由、社会相当性が必要だとされています。
一般的には、単位が足りずに卒業できなかったとか、何らかの事情で学校を卒業できなかったという時に、正式採用されないという現象が起きます。また、内定後に重大な経歴詐称が見つかった(学歴を偽っていたなど)というような場合も、内定取り消しは有効とされるでしょう。
では、コロナウイルスの流行を原因として「内定取り消し」をするというのは、認められるのでしょうか。学生(新社会人)の立場として、企業から通告される内定取り消しに、泣く泣く従うしかないのでしょうか。
使用者側の都合による内定取り消し
たとえば経済情勢の悪化、売り上げの減少など使用者側の事情による内定取り消しが有効かどうかについては、一般的には「整理解雇」すなわちいわゆるリストラと同様に、①整理解雇の必要性があるか②解雇を回避する努力を行ったか③解雇者の人員選定基準は合理的か④解雇手続きは妥当だったか、という4つの要素をもとに判断されます。
コロナウイルスの流行というのは、極めて特殊な現象であり、社会経済活動への影響は極めて甚大と言えます。そのため、本当にこの影響で売り上げが大きく減少してしまっている、経営状態が想定よりも大幅に悪くなっているという事であれば、①の整理解雇の必要性という要件は満たすケースが多くなると予想されます。
ただし、業種によっては、病気の流行にあまり売り上げが影響を受けないという場合もあるでしょう。もちろん一般論ですが、宅配・物流やインフラ事業などは、飲食店や小売・観光業などよりも影響が少ないかもしれません。あるいは、影響が出るとしても比較的順調な会社というのも実際には存在するので、そのような場合にはそもそも内定取り消しは認められないという場合が出て来ます。
また、実際に経営が悪化しているとしても、「コロナ」さえ理由とすれば無条件で内定取り消しが認められるという訳にはいきません。たとえば経費の削減などの②解雇回避努力を行ってもなおやむを得ないものなのか、③だれを解雇や内定取り消しにするかという選定の過程や④その説明や手続きの中で不当な点がなかったか、等が問題となります。
コロナウイルスの流行という極めて重大な事態ですので、これまでの一般論が当てはまらない場面が出てくることも容易に想像され、社会全体が混乱する中ですが、これをいいことに不利益を内定者に押し付ける、ということは許されません。逆に、緊急の事態で本当にやむを得ない状況なのであれば、しかるべき手続きを取ったうえで適法に人員整理や内定取り消しを行い、企業の存続を守らねばなりません。
内定取り消しの紛争の戦い方、解決のしかた
違法な内定取り消しに対しては、損害賠償請求が認められることがあります。過去の裁判例では、再就職に要した期間9カ月分の基本給相当の賠償額を認めたもの等があります。
内定者としては、採用内定の取り消し無効確認及び損害賠償を求める訴訟を提訴するという方法があるでしょう。
また、仮に内定取り消し自体はやむを得ないとされる場合であっても、内定からその取り消しに至る過程において十分な説明がなかったという理由で損害賠償は課せられたケースも存在します。
逆に起業としては、こういった紛争が生じないよう注意をし、訴訟に発展することを避けたいところです。現に勤務をしている従業員よりも内定者を取り消すという人選自体は合理的ではありますが、内定取り消しを回避するための方策が取れないかどうか、内定取り消し理由を説明し理解を求めるよう務める、実際にどのくらい会社経営に影響が出ているのかを事前に数値化しておく、場合によっては内定取り消しにあたって一定の金銭保証を提案して解決を目指すというようなことも検討すべきでしょう。
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